台湾野球映画に自ら応募した日本人!俳優・大倉裕真が挑んだ現地撮影の半年とは?
永瀬正敏主演の台湾映画『KANO』(マー・ジーシアン監督)に出演した俳優の大倉裕真が、このほど行われた第9回大阪アジアン映画祭でインタビューに応じた。同作品は日本統治下の1931年に日本人・台湾人・先住民の混成チームで甲子園出場を果たした嘉義農林高校の軌跡を追うもので、俳優陣も多民族が集結することになったが、大倉は「僕らも一致団結して同じ方向へ向かっていくことができたと思う」と撮影を振り返った。
大倉は11歳から芸能活動をはじめ、映画『ブタがいた教室』(2008)の生徒役ではアドリブ芝居、映画『金星』(2011)では視覚障害者と難役に挑んできた。『KANO』では少年野球の経験が生かせると自らオーディションに応募してチャンスを得た。大倉は「資料映像などを送ったところ、マー監督が『どんな人物か自分の目で確かめたい』と東京の事務所まで僕に会いに来てくれたんです」と語り、マー監督の熱意に胸を打たれたという。
しかし撮影は過酷だった。実話にのっとり、大倉は初めて一塁を守ることに。マー監督からは、捕球する際に180度開脚をするよう命じられた。身体の硬い大倉は、1か月間ひたすら柔軟体操をして要望に応えたという。そもそも撮影は当初、3か月の予定だった。しかし悪天候なども重なり6か月に及ぶ。言葉もわからずに1人で現地に乗り込んだ大倉だったが、いつの間にか中国語でコミュニケーションが取れるほどになっていた。
大倉は「負けず嫌いで一つのことに熱くなるのは役柄と共通しているかもしれません。練習期間を含めてひたすら野球漬けの環境は、自分をより一層ストイックにさせてくれました。加えて近藤兵太郎監督役の永瀬(正敏)さんに引っ張っていただきました。カメラが回ってないときでも近藤監督そのままで、毎朝お会いした瞬間に役柄同様に直立不動になってしまうくらい、オーラがすごかった」と語る。
その苦楽を共にした共演者たちは、投手役のツァオ・ヨウニンが台湾の大学野球で奮闘しているようにそれぞれの生活に戻った。大倉も大学に合格し、4月からも引き続き学業と俳優の両立を目指すという。しかし台湾では現在『KANO』旋風が起こっており、日本公開に向けて大倉への注目度も高まりそうだ。(取材・文:中山治美)
映画『KANO』は2015年日本公開予定